常勤医勝田へのインタビュー

受け手に誤解を与えない意図を伝えるレポート作り

画像診断とは?

  -先生が考える画像診断とはどんなものですか? 出てくる画というのは病気の可視化なんですね。最終的な病気の診断というのは病理画像と言って、顕微鏡で覗くものです。病理画像でいう顕微鏡で覗くプレパラートを、直接目で見るくらいの大きさのものが、全て画像に現れる。形から病気を診断する、それが画像診断のテクニックなんです。 目に見える形から病気を診断するというのは、お医者さんが一般的にやるような、身体所見、血液検査、問診なんかと基本的には良く似ています。形から所見を取る。身体所見と同じですね。呼吸の物音を聞いて、どういう音だろうか、どこから聞こえるだろうか、と。それと患者様の症状、訴えを聞いて、それらを合わせ、合致するもので診断する。 同じ所見でも、患者様の症状によっては違う病気が診断されるというのは当たり前の事なんですが、画像所見でも同じように、所見をとって、患者の症状、この場合には画像診断ですから、臨床医の先生から提供された情報をもとに、患者を総合的に、客観的に、この所見からどういうものが考えられるかというのを羅列します。そこから病気を絞っていく。所見は病理に近いような「病気を目で見る」という形態。MRIやPETなど、機能的な情報も多かったりはしますが、そういう情報を加味して診断していく。それが重要なので、画像診断していくにはそういう患者の背景とか情報、それがやはり、キーポイントになるのではないかなと思っています。    

画像診断を遠隔で行うということ

  -それを遠隔で行うということに対して、何かポイントはありますか? 遠隔読影が病院での読影と違うところは、情報量が限定されているところです。 病院勤務での読影では、今は電子カルテがほとんどだと思いますが、患者情報は電子カルテから足りない分を拾っていけます。問診と身体所見で診断するお医者さんは最近少ないとは思います。他の生理検査や血液検査とか、色々な情報を複合的に判断してやっていく。それと同じように、画像診断も本当は、複合的に診断した最終的なものがより良い精度のものになる。臨床医からの情報だけで診断していかないといけないという点で、遠隔はかなり不利になります。 検査目的はもちろんですが、患者がどんな症状で病院にきたかとか、僅かでもいいんですが、症状と検査目的を一緒にして依頼して頂くと、助かるなと思います。「ガンがありませんか?」だけでなく、「体重が減ったからがんを疑っている」、とか、「スクリーニング」とか、「血便があった」とか、「血痰があったからガンをさがしている」とか。 色々な症状によって、重点的に見るところが変わってきます。疾患前確率といってもいいですが、画像診断も検査なので、感度があって特異度がある。「全体の中で同じ所見を拾って、それが偶然その病気に一致する」確率より、「その症状のある患者さんにその所見が合った」時の診断精度の方が高まるわけです。 情報がない中でやると、無用な疾患候補がたくさん出てきてしまう。かえっていらない病気の可能性を指摘しまう可能性が高くなるわけです。「大腸の壁が厚いような気がする」と思ったときに、血便があれば大腸がんを疑う色合いが濃いレポートになるでしょうし、症状がないスクリーニングでとったものならただの腸炎かなと考えますし。疾患前確率をたかめ、診断精度をたかめるため、そういった情報が欲しいです。   -先生がお得意とされている部位はありますか? 呼吸器でしょうか。呼吸器はかたちと病気がほぼ一致するんですね。背景が空気を多く含む臓器なので、コントラストが高く、僅かな水のしみ出しも鋭敏にとらえることができる。その分、鑑別できる病気が多くなり複雑化します。だから反対に嫌いだ、とう方もいますね。腹部や他の臓器、潤湿臓器と違炎症の疾患の鑑別や、僅かな繊維化とか、他の臓器では見られないようなささいな病理学的変化が画像に変換される、そういうところが好きですね。 大学の方でも入局してからずっと、10年以上は病理系列のカンファレンスや外科・内科の合同カンファレンスに出ていました。7、8年ほど、放射線科の代表としてカンファレンスで発言していました。そのあたりで、臨床の先生が何を考え、どうされたいのか、わかるような領域でもあります。もっとも、読影は基本的になんでも好きです。  

院内読影と院外読影

  -外から中をサポートされる立場に変わられて、いかがですか? 基本的には中で完結できることがベストなんだと思いますが、常勤医は画像診断の他にも、IVR、患者の診察、入院患者を持てば病棟管理、大学病院や市中病院なら教育がある施設であれば、指導も必要になります。研修医がローテートされる科のひとつなので、一日中読影をしていればいいという立場ではない。そういう時にはやはり、病院内とは違うので若干の精度が落ちたとしても、全く読まれない画像が出るよりは、放射線科医が読んだレポートがつく方が、医療の質は高まるのではと思います。 医療安全は10年ほどトピックスですよね。ここ20~30年の情報量の増え方は尋常ではないです。肺がわかってもお腹はわからない、肝臓や膵臓はわかっても映り込む他の臓器はよくわからない、と、専門性の高い内科の先生たちが多いと思います。若い先生もいらっしゃる中です。放射線科医を頼って頂ければ医療の質も高まりますし、見落とし、誤診を防ぐ意味で、安全だと思います。 遠隔読影では、読影に集中できる医師が集まっています。そこが遠隔画像診断のつよみじゃないかなと思います。   -レポートについて、どんなところに気を配っていますか? クリニカルクエスチョンに対しこたえるように心がけています。検査をして情報量が増えない、そういうレポートをつくらないように心がけています。クリニカルクエスチョンがあればあるほど書きやすいです。それがない場合は、想像しながら書いていますね。   -レポートの書き方については? ひとつはやはり、所見とインプレッションは分けて書くべきだと思います。 肝臓で低吸収な結節があったとき、嚢胞と書くのは簡単ですが、嚢胞でないこともたまにはあるんですよね。そういう時に思考停止にならないよう、所見を拾ってから、診察を書くのが基本だと思います。 必要なネガティブインプレッションとできるだけ全てのポジティブな所見は取るようにはしています。ただ、これは趣味が大きいところかもしれません。必要のないポジティブ所見を落とす先生もいると思います。なぜそれをおとすの?という先生もいる。 術前とスクリーニングではまたちがうし、検診と診療もちがうと思います。検診は全て拾うとかなり高確率でひっかかってしまう。それはもう、健診ではないですよね。技師さんとしても診断学ではないレポートのつくりかたと、診断学としてレポートをつくっている先生という意味でも違うと思います。 例えば肺の結節でいえば、8割あると思います。でも、健診として8割ひっかけるというのは破たんしています。肺の胸膜化の3mm以下の結節であれば、多数の肺検診トライアルではひとつも肺がんがでてこなかった、なんていう研究データもあります。 全て拾って下さいといわれると、全て要精査や要経過観察になってしまう。本当は、拾う閾値があって拾わないと、それはもう検診ではないはずですよね。だから検診は検診としてやるならば、本当はクライテリアからつくるべきですね。読影医として私は、自分の主義主張を通すのでなく、クライテリアも含め、ニーズに沿いたいと思っています。  

受け取る先で誤解がうまれないよう、言葉を尽くす

  レポートはできるだけ誤解がないよう、言葉をつくすようにしています。 「~疑い」、「~の可能性がある」、「~が否定できない」では、全員違うニュアンスで使っていると思うんです。ただ「それをどうとるかは向こう次第だ」、としてしまと、自分はこういうつもりで書いていた、と自分で思っていても仕方ないわけです。伝わる言い方で伝えないといけないですよね。 転移癌も、癌の前に肺に結節があった場合に、「この結節は肺転移の可能性があります」であれば大変簡単ですし、「肺転移を否定できません」、と書けば、決して間違いではないです。でも実際、読影医がどう思ったのかは書かれていない。インプレッションではないんですね。僕は「肉芽腫だと思います。だけれども、肺転移の可能性もあるので、経過観察してください」、と。 ことばをひとつ足さないと、「否定できない」と書かれたときに、臨床医として「じゃあ手術ができませんね」と考える先生と、「ダウンステージでオペをしましょう」と考える先生がいるかもしれない。何気なく使ったどうでもいい言葉で、患者の運命が変わる可能性が出てきてしまうわけです。   私はできるだけ誤解がないように、それを受け取った臨床医によって、次のステップが変わってしまわないように、言葉をつくして、必ず自分のスタンスを明らかにした上で書くようにしています。行間が伝わるかどうか、まだまだ、難しいところもありますけれど。   -お客様からも、たくさん書いてあって全部読むんだが、結局僕はどうしたらいいだろうと悩ましい時がある。判断は主治医の責任ではあっても、どうしたらいか、が伝わるとありがたいと聞いたことがあります。 そうですよね。専門外の病気がたくさん写ってくると…5つぐらい書きたい時ですね。病名だけ書いていくのは簡単ですが、知らない病気の名前をかかれても困るということはありますよね。相手はドクターなので、調べて頂ければ辿り着くとは思うのですが、経過観察で良いのか、精検しなければいけないのか、それともこれは、原因疾患なのか?色々あります。特殊なことがあれば、それが疑われる原因をわざわざ、書くことはあります。    

受け取る相手の立場に立ったレポート作成

  -受け手の立場にたったレポート作りはどうして? 私は大学が長かったです。研修から愛知医大に、12年間いました。知り合いが多いんですね。同級生、先輩、後輩。同級生がだんだん上級医になってくると、「勝田に聞いてみろ」となってくる。カンファレンスに指名で呼ばれたり、一緒に研究したり。すると、どうしてほしいか、何を求めるか、わかってきますね。 もっとも昔は、私自身もとがっているところがあって、こちらから先生に電話して「先生、検査の意味が分からない、おっしゃる意味がわかりません」なんて、わざわざ言っていたこともありました。   -勝田先生を表すとしたら、どんなレポートのご要望にも合わせます、でしょうか? そういうわけではないですが、やっていく中で…望まれないものをつくっても仕方がない。読影は何かをつくる作業なので、どうしても主義主張が入り込むんですね。絶対にスタイルを変えない先生もいらっしゃるかと思います。でも、ニーズに沿えないことで、価値が下がってしまう場合もある。どちらでもいいと思えるものなら、要望に沿ったほうが、互いに幸せだと思いますね。私は実家が医者の家系ではなく、乾物問屋、商売をやっているんです。そんな影響もあるかもしれません。 読影医にも嚢胞なんて書かなくていいと思っている先生もいれば、嚢胞でも違うかもしれないし、全部しっかり書こうという先生もいます。まして受け取る相手も色々ですから、100点は難しいです。それでも、私たちはレポートが商品です。顧客ニーズに合わせるのは当たり前だという言持ちは強いですね。    

ご紹介

    勝田 英介