常勤医工藤へのインタビュー

放射線科医としての本質を見つめ直し、次なるステージを開拓する

「臨床現場における遠隔読影のポジション」

-「読影」とひとくちに言いますが、先生が考える「読影のあるべき姿」とはどのようでしょうか? 私個人の場合なんですけど、父が病理医であったことと、一旦臨床を離れて海外の研究機関で核医学の基礎研究に没頭した事が自身の読影スタイルに大きく影響していると思います。 私自身は画像を診るときに、先ずミクロから入るようにしています。腫瘍、変性疾患、整形疾患、代謝疾患、、、 いずれにしろ、生体内代謝の細胞学的裏付けがあって、それをベースにしてマクロな画像が構築されてくる。 今、自分自身が読影にあたり立てている仮説理論は、総合的な臨床診断として、生体反応と矛盾していないか?破たんしていないか?ということを常に考えています。 例え画像上顕在化していないとしても、臨床上疑わしいものがあれば、それは顕在化していないだけで、根底にはあるんじゃないか?そう疑うということです。 それ故、遠隔画像診断だからこそ、臨床情報がとても重要になります。僕らはそれによって、出す診断の範囲が限定される事が多分にありますので、より精度の高いレポートをお戻しするためには御協力頂ければと思います。  

「臨床医と放射線科医でつくる双方向コミュニケーション」

-現在現場から依頼を受ける状況でいうと、どうですか? 現場のドクターが欲しい臨床情報とこちらの必要とする臨床情報は同じなので、その共有がもちろん第1ですけれども、裏に控えている事象の方が大きいのに、実はそれが見えていない、ということはあるのではないかと思っています。 例えば「発熱」で全身CT依頼を受けるケース。発熱自体は奥が深く、スクリーニングCTとしての有用性を否定するものでは無いですけど、例えばこれが単純に脱水であったりすると、脱水は画像上見えません。実は根本的な病態なのに、即、全身検査をしてしまう。全身検査をすれば、それは医療費の無駄遣いだし、被ばくリスクにもなってしまいますよね。 簡単に全身CTが撮れる時代になり、スクリーニングとして撮ってしまうものの、内科的にはそれはいらなかった、ということはままあるのではないかと思います。   -依頼する側として、出すべき情報なんかはありますか? 遠隔読影では今のところ病院内患者情報に直接アクセスはできず、引き出せる情報に限りがあるのは分かっています。ただ病院側にも、遠隔読影会社や画像診断医をもっとフランクに有効利用してもらえればとは思います。 というのも、頂いた依頼内容に関して、依頼医師の本音の部分はこれで全てだろうか?と思うことがあるんですね。もう少し臨床医の本音の部分、例えば「通常だとこういう診断になるけれども、診察現場の感触としてはこっちの可能性はどうなのかな?」みたいに、診断プロセスを共有してもらえたらなと思います。 先の例で言うと、発熱ひとつとっても「依頼内容:熱発」で終わりなのではなく、例えば、「この患者の場合は実は消耗性発熱や心因性発熱だと思っているが、他に熱源ないか?」と。この「実は」の部分が非常に大事だったりするので、そこのフランクな打ち明けが欲しいですね。 主治医には、治療や画像診断の前に、自分で考えているプランがあるはずなんですね。「主訴」「診察所見」「プラン」「治療」…そういった所見やプランを共有させてもらって、「こういうプランを考えているけれど、画像的に矛盾はないか?」という感じですかね。 同じ病院に所属しているドクター同士であれば、電子カルテや検査データといった臨床情報共有は暗黙の了解ですが、遠隔読影なので見たくても見れません。患者の主訴以外にも、主治医が考えているプランを共有させて貰いたいんですね。 プランを共有させて貰えれば、ドクター対ドクターとして、深い知見共有と診断が可能になると思うんですね。それが、僕の理想とする主治医をサポートする放射線科医の形ではないかと考えてます。 また、放射線科医側は逆に、臨床実地として足りない部分が多々あります。全科をまたいだ仕事にも関わらず、臨床全部を知っているわけではないので、こんなことをレポートに書いたら現場の先生の逆鱗に触れるかな?と思うこともありますよ。それでもなるべく率直に、目の前の画像データを基に書くようにしています。 そういうコミュニケーションを取れるほうが、仲良くなれるんじゃないかと思います。  

「遠隔読影医が臨床現場に寄与出来るインパクト」

-開業医の先生に、工藤先生のレポートには臨床情報に基づいた提案があり本当に助かる、と喜ばれたことがあります。 ありがとうございます。僕は依頼ドクターに対して、レポートで画像所見以外に個人見解のメッセージを送っているということがあります。 読影診断としての回答はもちろんですが、ドクター同士、うまくやりましょう、ということはレポート内にもちりばめているつもりです。もちろん読影医のレポートスタイルは本当に様々で、それこそ絵画の如く、古典派・印象派・写実派などなど分類出来そうなほどで、どれが一概に優れているという訳ではありません。病院側とのマッチングもありますしね。 僕の場合は、丁寧さが伝われば良いなと思っています。    

「PET-CT読影で大事にしているエッセンス」

-特にPET-CTを専門に診て頂いていますが、この読影の特徴はありますか? PET-CTの一番大事なところは、核医学というのは、ファンクショナルイメージ(機能画像)であるということです。これを理解していない放射線科医が意外と多いと感じています。解剖画像と機能画像というのは、全く、表現される意味が違うんです。 PET-CTは両方の画像を融合(フュージョン)させることで初めて意味を成すんですが、核医学を「機能画像の検査」と概念的に理解している人が意外と少ないんじゃないかと。放射線科医の中でも、あまりトレーニングされていないと、機能画像という言葉にピンとこない場合もあります。  

「からだで起こっていることを画像がきちんと現しているか?」逆説的に考える

FDG-PETの場合に限らず、核医学の世界では通例なんですけど、生体内で起こっている生理現象を機能画像がちゃんと表現出来ているのか、逆説的に考えなきゃいけないと思うんです。でもどうしても、画像のみを判断しようとしてしまう。「集積が単にある、無い、強い、弱い」と。もちろん診断業務という意味では根本作業の一部なんですけど、真に重要なのは「じゃあ総合的に判断して、現況の生体内反応と合致しているのか否か?解剖画像とも矛盾がないのか?」判断するのが臨床として大事だと思います。   -専門医はどうトレーニングをしているんでしょうか? 核医学は内科学で言うところの生理機能の画像表現形なので、核医学専門医は各臓器の生理的機能に比較的精通しています。つまりファンクショナルというものを理解するために、かなりマニアックなことを今迄学習してきています。すごく細かいことまで分かっているのですが、全部そぎ落として、最終的にかなり単純なことしかレポーティングしていないということはありますね。   -数をこなせばいいということではないのですね? 数をこなすトレーニングは必須ですが、それプラス、優れたメンターに受けてきたトレーニングの質です。ゴルフと一緒で、我流である程度は上手く行きますが、本質的な動きを理解して体得しなければ、更なる高みへとは繋がりません。独学での努力が限界とは言いませんが、優れたメンターの見識は本当に広くて深く、色々と勉強させて貰いました。   -遠隔読影会社の読影としてはどうでしょうか? 少なくとも、セントメディカルでいえば、補い合っていますね。読影ドクターが増えて、当社常勤ではない外の先生とも、教えたり、教えられたりして知識や経験則を共有できています。指導し合い、協力し合える体制ができていることが、本当に、一番大事です。    

「読影医を取り巻く環境、教育の体制」

-「からだで起こっていることを画像がきちんと現しているか」逆説的に考えるのが大事ということでしたが、これは、全ての放射線科医にとって、「当たり前」なことではない? そうですね。CTやMRI普及に伴う処理件数増加にも原因があると思います。画像取得が簡便になり、しかもそれなりにきれいな画像ですから、「いいところ、悪いところ」を単純にプロットして摘み取る作業がメインになってしまっている、この点は心配しています。 ドクターなんですから、その患者の生体内に起こっていることに対して説明出来ないと、本当にその病気が原因の症状なのか、画像所見なのか、そういった読影医視点を反映した良いレポートを書いていきたいですよね。   遠隔読影という特徴上、全国津々浦々の先生方の読影レポートを拝見する機会はかなり多いのですが、地域性や大学特性などが如実にあらわれて非常に興味深いです。ただそこで感じるのは、あまりにも、読影医としてのスタート時期に軸となる基礎を教わらなかったのではと考える事が多々あります。教える側として「その診断はあっている」「違っている」だけでは育たないですし、守破離という言葉がありますが、教わる側としてもある程度の疾病パターン認識を脱したあとにどう個性を出していくのか、そこまで考えて仕事をしていないのではと感じることもあります。 そうは言いましても、放射線科領域の特性上、Ai(artificial intelligence)導入の波は予想外に早く、構造化レポートに関しても今のうちから慣れておかなければならないと感じています。  

「放射線科医として、今後のビジョン」

-そういった状況は、打開できるのでしょうか? 放射線科医として、スキルアップができ、知識や経験の共有が出来る。それが求められていると思います。そんな中で、医局派閥を超えて個別対応できるのは、僕らのような独立組織になってきているように思います。 だからこそ、そういったスキルアップしたい先生は、どんどん来て頂きたいです。どうぞ、一緒に勉強しに来てくださいと言いたい。 我々が足りない部分を教えて頂きたいですし、ひとりでなく、みんなでやろうと。 少しでも知識を共有して、意思疎通が可能な仲間が増える事で、最終的に画像診断医のポジションが良くなればいいなと思っています。 遠隔読影会社に属する医師として、うちではそういうことができる、少なくともそういう意志を持った集団であると、もっと知ってもらいたい気持ちもあります。  

ご紹介

    工藤 元 GEN KUDO 医学博士 放射線診断専門医 核医学専門医 1974年生れ、2000年藤田保健衛生大卒 保大放射線科講師、PMH/STTARR(カナダ/トロント)Research Fellowを経て現職。 カナダスタイルのゴルフライフが心の拠り所。 モットーは 「主治医や読影仲間を孤独にさせない」 「科学者である事を常に忘れない」 画像診断領域の知的集合体を創るのが夢。